建物の屋上などを緑化するときに、最も大きな問題となるのは建物の防水である。その問題点は、@植栽のための客土と防水層の納まりA植物の根が防水層に与える影響B屋上の勾配と防水層や客土の滑り──などである。では、これらの問題点の実態とその対策について考えてみたい。
^客土と防水層の納まり
植栽のための客土は、造園設計の段階のおいて植栽の種類や大きさによって必要な深さが決められるため、防水工事とは関連ないように思われる。しかし実際に施工された現場を見ると、防水層の立ち上がり高さと客土の高さが同一、逆に防水層のほうが低くなっているのが見受けられる。屋上植栽で発生した欠陥の大部分は、このような納まりの状態の時に、防水層の天端から防水層の裏へ雨水が回って漏水するという事故である。
この原因は、建物の高さ制限からくるパラペットの高さと、樹木の選定や客土の深さに問題があるためで、計画および設計の不備である。防水層の高さと客土の高さの問題は、屋上の緑化を計画する上で最も注意しなければならない問題である。
その対策としては、防水層の立ち上がりの高さより客土の高さを低くすること。最低でも客土表面と防水層の天端は、200mm以上は離す必要がある。また防水層末端部の処理にも、気を使って行うべきである。もう一つの対策としては、防水層を納める立ち上がりとは別に、客土を入れるための立ち上がりをもう一つ設ける方法であろう。
_植物の根による防水層の損傷
植物の根が防水層に与える問題としてよく言われるのが、植物の根が防水層を突き破ったりする損傷の問題である。アスファルト防水の瀝青層には、植物の養分となる物質が含まれているのか、かなり執拗に根が食い込んでしまう。
その対策としては、防根用のシートを敷き込むこと。最近ではこの防根シートがかなり効果を発揮していて、シートの施工さえ確実なら、もはや通常の植物なら根による防水層の損傷は起こらなくなっている。
`勾配がある場合
勾配のある屋根に植栽を設置する場合には、防水層のズレや客土の滑り落ちなどの問題が発生する。また給水の問題もあって、平場にはない様々な問題が発生する。
このようなケースでの対策は、最近一般化してきた屋上緑化の専用工法を活用し、それに全体にメッシュを張ってズレを抑え、給水も自動給水機を導入するなどの工夫が必要であろう。
屋上に植栽を施す場合、問題となるのは幾つかに絞られるが、今後課題となるのは、もし防水層に不具合が起こった時、また経年後に防水の改修が必要いなったときであろう。通常の防水改修では考えられない費用と労力、工期が必要になってくる。
建物のライフサイクルを考えて植栽下の防水層の耐用年数を決め、防水工法を選定する他、全体の仕様も、将来の改修工事を念頭にいれた構造形態にするなどの検討も必要であろう。
屋上緑化の改修工事は、通常の防水工法に比べれば耐用年数も長いはずだが、何れは工事が行われることも考えると、将来の大きな課題になるかもしれない。